灯し火写真

祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり

五條 #1

 

大阪府との県境に立つ金剛山の南麓に位置する奈良県五條市は、和歌山県橋本市と隣接しており、大台ケ原を源流とする吉野川の流域にある。

吉野川は五條を過ぎると紀ノ川と名称を変え、そのまま西へ和歌山県を横断し、紀伊水道へと至る。

 

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Leica M10 + R-Adapter M + Summilux-R 80mm f1.4

 

五條という地名は、金剛山から吉野川へと注ぐ5つの谷川に由来するという説や、東へ向かう「伊勢街道」、 西へ向かう「紀州街道」、紀伊半島を南北に縦断する「西熊野街道」、奈良へ通じる「下街道」、大阪へ繋がる「河内街道」と、五街道が交差するところからという説がある。

 

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Leica M10 + R-Adapter M + Summilux-R 80mm f1.4

 

いにしえから水陸両路の要諦として開けていた五條だが、今も残る五條の街が形づくられ始めたのは400年前、江戸幕府成立直後のこと。

徳川家康の命を受け五條入りした「松倉重政」が都市づくりに着手、「五條新町」を興し、商家を各地から誘致したのが始まりとされる。  

 

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Leica M10 + R-Adapter M + Summilux-R 80mm f1.4

 

松倉重政によって築かれた新町は、吉野川沿いの、紀州と伊勢を繋ぐ街道筋に、まっすぐ敷かれた1kmほどの道路に過ぎないが、今なお間口の揃った町家が軒を並べ、整備はされているものの観光地として喧伝されることなく、往時を偲ぶ落ち着いた素敵な佇まいを見せてくれている。