灯し火写真

祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり

大和高田 #1

 

奈良県大和高田市奈良盆地の南西部に位置し、中心には北から近鉄大阪線の「大和高田」駅、JR和歌山線/桜井線の「高田」駅、近鉄南大阪線の「高田市」駅と、ほぼ2kmの間隔に3つの駅が存在し、大阪市内から電車で約40分の圏内にある。

 

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Leica M10 + Summilux-M 50mm f1.4 asph.

 

日本最古の官道と伝えられる横大路(竹内街道)の要所として、中世には濠(お堀)に囲まれた環濠集落、室町時代には當麻高田氏によって築かれた高田城の城下町、江戸時代には専立寺を中心に寺内町が形成され、大和の中心的な商業の町へと発展した。

 

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Leica M10 + Summilux-M 50mm f1.4 asph.

 

江戸時代に「和州第一之売物」として名を馳せた綿業が盛んになり、明治には「大和紡績工場」が設立され、「大日本紡績高田工場」と名を変える頃には日本の繊維産業の中心となったが、後を受け継いだ「ユニチカ高田工場」は、自由貿易化の煽りを受け1977年に閉鎖される。

 

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Leica M10 + Summilux-M 50mm f1.4 asph.

 

戦後紡績工場の繁栄に伴い周辺は機械や繊維加工などの関連産業が活性化、近代的な都市整備が進み、商店街や娯楽施設は賑わい、バブル期には大阪のベッドタウンとして人口が増加、古来より人々が往来する活気あふれる商工都市だった。

 

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Leica M10 + Summilux-M 50mm f1.4 asph.

 

かつての賑わいが偲ばれる商店街が3つの駅を繋ぐように散在し、アーケードの隙間からは葛城連峰を伺うことができる。

時折小雨の降る中を歩いてみると、秋雨の雲から溢れる柔らかな光が似合う、落ち着いた風情ある街道沿いの中世都市という印象だ。